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読了『さざなみのよる』

木皿泉さんの、『さざなみのよる』を読了しました。

先日、いわた書店さんの「一万円選書」を利用したのですが、この本は、その中にあった1冊です。

著者の木皿泉さんについて

おふたりで書かれていらっしゃるんですね。

木皿泉さんは、ご夫婦の脚本家です。和泉 務(いずみ つとむ)さんと、妻鹿 年季子(めが ときこ)さん。

代表作に、『野ブタ。をプロデュース』『すいか』など。

(すいか、見たことがないのですが、小林聡美さんが主演なので気になってます!)

小説の作品は、『昨夜のカレー、明日のパン』が初の小説作品です。

とてもわかりやすい文章で、物語の中に迷いなく引き込んでくれる、読みやすい物語を書く方だなぁと感じました。脚本家というお仕事をされているからこそなのかなぁと感じました。

本の構成

全14話で構成されています。

序盤の登場人物

  • 病気で入院中のナスミ、姉の鷹子、妹の月美の三姉妹
  • ナスミの旦那の日出夫
  • 笑子おばあちゃん

感想

好きな場面 1~2話でかんじたこと

まず、1話と2話を読み終わったときに、すごく、物語としての満足感がありました。

2話でおわりでもいいんじゃないかと思いました。

どうしてそう思ったかというと、1話と2話の物語の締め方がとてもよかったからです。この場面がとても印象的で好きです。

著者が、ドラマを手掛ける脚本家だからでしょうか。映像と、音が聞こえたような気がしました。

1話目と2話目の、リンクするようなラストで、この姉妹の物語として完結しても、すごく満足できると感じました。

あたたかい物語

2話で満足とは言いましたが、3話以降も読み進め読了しました。

1話1話、主人公が変わっていき、ナスミとその周りの人たちの物語が進んでいきました。

お話が進んでいくと、意外性のある展開もあり、面白かったです。

ナスミの周りの人たちのお話が始まっていくのかなぁとは思いましたが、過去に公園であっただけの男から、ヒヤリとする手紙が届いたり・・など、物語に緩急がありました。

文章としてのわかりやすさ、物語としてのわかりやすさ、どちらも◎

脚本家さんだからでしょうか。物語の構成も、文章のつくりも、すごくわかりやすくて、読みやすいです。人物描写も、みんなしっかりしていて伝わってきました。

デメリットというか、好みの問題ですが、物語の中でしっかりと正解の道筋を提示してくれるので、答えをあきらかにせず読者にゆだねる・・というような部分はほとんどありません。読者にゆだねる部分を多く持った文学的な作品が読みたい方には、物足りなく感じるかもしれないと感じました。

この本は、もやもやすることなく、すっきりとした読後感と、ほっこりとした温かい気持ちを感じられる本です。(帯では、泣ける本!と書かれていましたが、わたしは泣ける要素より、温かい要素の方が強く感じました。)

内容にリンクした表紙が好き

富士山、桜、飛行機、ダイヤモンドが描かれたこの色鮮やかな表紙がとても好きです。

あとがきからわかる著者の作品に込めた気持ち

あとがきでは、著者が新しい腕時計から気づいた「時間」についてのお話が書いてありました。

時計は時間そのものではない。時間は時計だけであらわせるものでもない。

p227 あとがき

そして、この物語をつくろうと思った理由についても書かれてありました。

「消耗品」として扱われるものが多い消費社会の価値観に危惧を感じ、遠くを見据えた気持ちで、「時計ではあらわせない時間の話」を書かれたそうです。

同じ時間を生きる人たちにために、私たちが死んだ後に生きる人たちのために、もっともっとちゃんとしたものを書いてゆきます。

p229 あとがき

木皿さんが書かれたこの作品も、書かれた思いも、すごく素敵なものだと感じ、支持したいなぁ、とかんじました。

この本が好きな方に、オススメしたい本

読了した方向けですが、この本を読んで好きだなぁと感じた方に、おすすめしたい本を考えました。2冊あります。

読みやすい構成・文体がよかったと感じたら・・・

月まで3キロ

『さざなみのよる』は、わたしにとってとっても読みやすい!と感じる本でした。文章のわかりやすさと、緩急のある物語の展開から、どんどんお話に引き込まれていきました。心情もはっきりと丁寧に描かれているので、すっきりとした読後感がありました。

以前、読んだ本で、同じように感じた作家さんがいます。その方は、伊予原新さんです。伊予原新の『月まで3キロ』をお勧めします。

『月まで3キロ』は、文庫化されており、短編集なので、どなたでも抵抗なく読めると思います。

テーマが似ている本

ライオンのおやつ

『さざなみのよる』では、ナスミが病院で入院しているところからはじまります。「病気」や「死」をテーマに扱った本で、印象に残っている本を思い出しました。小川糸さんの、『ライオンのおやつ』です。「死」をテーマに扱いながらも、あたたかさを感じる小説・・という共通した感想を持ちました。

『ライオンのおやつ』はホスピスで暮らす主人公が「死」に向かっていくストーリーです。

作者の小川糸さんのメッセージに、このような言葉がありました。

読んだ人が、少しでも死ぬのが怖くなくなるような物語を書きたい、と思い『ライオンのおやつ』を執筆しました。 

https://www.poplar.co.jp/pr/oyatsu/

この言葉は、『さざなみのよる』という作品にもあてはまる気がすると感じました。『さざなみのよる』の序盤に、誰も死んだことがないからわからないけど、一生懸命やってるんだなぁ・・と、ナスミが病院で感じる場面がありました。「死」とは、わからないものだから、とても怖い。でも、作品を通じて「死」に向き合うことで、こんな考え方もあるんだなと、思える気がしました。

読了後には、にぎやかな解説を読もう

解説を担当されたのは、俳優の片桐はいりさんです。

はいりさんおひとりの解説のはずなのに、対談になっていてとてもにぎやかです。

(映画かもめ食堂の片桐はいりさんがとてもすきです!)

ドラマが先なんだって

解説を読んで知ったのですが、この小説のもととなるドラマが先にあるんですね。ドラマでは、ナスミが幽霊としてでてきて、笑子おばあちゃんだけに見えるという設定で進むそうです。

好きな場面について箇条書き(ネタバレかもです)

多少ぼかしますが、ネタバレかもです。

  • 人を文字で例える。
  • 1話ラスト、2話ラスト。同じ時系列の場面を、異なる視点で描いていて、その光景がすごくいいと感じました。
  • ナスミが笑子おばあちゃんに遺言としてダイヤモンドを託し、おばあちゃんが遺言を実行するところ。
  • 公園の男からの手紙の締め
  • ナスミ、ぶんなぐる。(いいぞ、やれー)
  • お姉ちゃん、出版社に乗り込む。
  • 家出娘ふたり勢ぞろい。
  • ダイヤモンドがなくなっていると気づく場面。

びっくりした場面についてつぶやく(ネタバレかもです)

  • 床屋のお嫁さんも、ナスミさんと接点あったんかーい!
  • そこで再婚かー!あっさりびっくり、なるほどー!この人が、「と」の人かぁ。
  • 小さいころの公園の人からの手紙は、新しいパターンだなぁ

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